ペットとして取引される
野生動物
知っておいて欲しいこと
ペットとして取引される
野生動物
また、ペットショップで野生動物を販売する場合、その動物種の専門知識は必ずしも求められません。事業者としての登録は必要ですが、なかには適切な管理ができていなかったり、違法な取引に関与したりするペットショップも存在しています。
もし、野生動物の購入を考えるなら、その個体がどこから来たのか、そのペットショップが十分かつ確かな情報を提供できるかを確認しましょう。
そのペットは
どこから来たのか?
ペットの流通と販売の問題
どこから来たのか?
ペットショップ、フェアやエキスポと呼ばれる展示即売会で販売されている動物がどこからきたのか、考えたことはありますか?
犬や猫であれば、繁殖業者(ブリーダー)、卸売り業者や競り市からペットショップが購入している場合が大半です。そのため、動物の出身地や誕生日が記載してあったり、血統書(血統証明書)という、犬種・猫種名、生年月日、繁殖者名、数代前までの血統情報が記載された書類付きで販売されていたりします。
犬猫以外のエキゾチックペットの場合も、ウサギ、モルモットやハムスターなどは、日本で繁殖された個体が多く販売されています。しかし、同じエキゾチックペットでも、フクロモモンガやヨウムといった野生動物の場合、その多くは、海外から日本へ輸入された個体です。
日本に輸入される動物たち
どんな動物が何処から輸入されているのでしょうか?日本は、年間40万頭もの生きた野生動物を輸入しています※1。そしてその中には、絶滅が心配されている動物種も少なくありません。
絶滅のおそれのある野生動植物を過剰な利用から守ることを目指すワシントン条約によって、取引が規制されている動物種もいます。この条約の規制対象となっている動物種のうち、野生で捕獲された商業目的の動物に限っても、2020年に日本は1万頭以上の野生動物を世界各地から輸入しています※2。
「由来のわからないペット」
のリスク
ペットショップには、販売する動物の「生産地等」を表示する義務があり、購入者に対しては対面で「繁殖した者(もしくは輸出した者又は譲渡した者)の氏名・名称と所在地」を伝える義務があります※3。
しかし、野生動物の場合、そこから遡って由来を特定するのは非常に困難です。
血統書などの出生を証明するシステムが確立されていないことに加え、国内外を問わず、生まれた場所からペットショップに行きつくまでに、さまざまな国の業者や、複数の航路、空路を経て取引されることが多いため、その複雑な販売経路をたどることができる「トレーサビリティ(追跡可能性)」が確立されていないからです。
さらに近年は、パソコンやスマートフォンを使って簡単に個人間でもペットの取引が行われています。しかし、動物の販売には事業者としての登録が必要であったり、取引できる動物種も法律等で規定されていたりします。見ず知らずの相手が、こうしたルールを守り、信頼できる取引を行なっているのかどうかを見極めるのは困難です。
また、トレーサビリティが確保されていない野生動物の個体は、適切な健康診断・ワクチン接種や検疫を通過していない可能性も高く、未知の感染症を引き起こす病原体を持ち運んでいるおそれもあります。一般の消費者がこうした「由来のわからないペット」を購入する場合、そこには大きなリスクがあることを認識しておく必要があります。
エキゾチックペットを
購入する前に
ペットショップで注意すべき点は?
購入する前に
エキゾチックペット、特に野生動物のペット取引が抱える問題は、「由来のわからない」ことだけではありません。現在の日本の法律には、規制が不十分な点も多くあります。野生動物の購入や飼育を考える場合には、次のような点について注意しておいた方がいいでしょう。
- ペットの入手先は、適切な事業をおこなっているか?
- 専門知識のある事業者か?
- その動物種が売られていることはおかしくないか?
それぞれのポイントを詳しくみてみましょう。
お店選びの注意点
日本で動物の販売、展示や訓練等を営利目的で行なう場合、動物愛護管理法(正式名称:動物の愛護及び管理に関する法律)に従って「第一種動物取扱業者」として登録することが義務付けられています※4。ペットショップとして動物を販売する場合はもちろん、個人でも繁殖させた個体を繰り返し他者へ販売する場合、アニマルカフェのようなふれあい・展示施設、ブリーダー、ペットホテル、トリミングサロンなども登録が必要です。こうしたペット関連の事業者を利用する際には、事業所に第一種動物取扱業者の「標識」か「登録証」が掲示されていることを確認するのは、大事なことです。
保護動物の里親探しを行っているNPOなど非営利団体であっても、「第二種動物取扱事業者」として登録がなされているか確かめましょう。
ペットを事業者から入手する場合、動物の取引管理が徹底しているのかもチェックすべきです。たとえば、一頭ずつ動物の由来などを把握し、必要な場合その証明が出来るか、など、きちんと情報が開示されているかを確認しましょう。
きちんと世話ができているのかも重要なポイント。ケージが排泄物や食べ残しで汚れていたり、極端に狭かったり、過度に照明が当てられているような場合は、適切な飼養が行われているとは言えません。
また、入手を検討中の消費者に対し、飼育方法や特徴的な病気・怪我の説明などについて、専門的なアドバイスができるスタッフがいるのかも、直接聞いて確認することが重要です。良いことばかり強調する場合は、注意が必要です。
野生動物販売に
専門知識は不要?
野生動物を販売するペットショップは、事業所毎に動物愛護管理法に基づいた「第一種動物取扱業者」登録を行うことが義務付けられています。そして事業者によって、「動物取扱責任者」が選任されています。責任者になるためには、獣医師資格や実務経験などが必要です。しかし、野生動物の専門知識は要件とはなっていません。
責任者は、講習を受けることや、動物愛護管理法等の違反がないように動物及び施設の管理者を監督するといった義務を負います。ですが、これらも犬猫を取扱うことを前提に定められた内容であり、飼育や管理に特別な知識や技術が必要とされる野生動物の管理を適切に行なうのに十分かは疑問が残ります。
両生類や魚類、昆虫の販売は
規制の対象外?
動物愛護管理法で、動物取扱事業者としての登録が義務付けられているのは、哺乳類、鳥類と爬虫類(実験動物・産業動物を除く)を取り扱う場合のみです(2022年11月現在)。両生類や魚類、昆虫などはこの対象に含まれていません。
絶滅の危機にある種を含む、カラフルなカエルや熱帯魚、珍しいカブトムシやクワガタムシなどは、エキゾチックペットととして人気があるにもかかわらず、誰でも自由に売り買いができてしまうのです。
一方、両生類や魚類にも法律・条例などで捕獲や取引が禁止・規制されている種もたくさんいます。例えば、種の保存法で捕獲や売買・譲渡などが禁止されている日本原産の両生類は40種います(2022年11月現在)。
動物取扱事業者としての規制対象でない両生類などについては、取引ルールや管理経験が全くない人が、捕獲や販売が禁止されている事実を知らずに、販売している可能性もあるため、こうした動物を購入する際には一層の注意が必要です。
入手を考えている動物がペットショップで売られているから安全、安心とは限りません。そのペットショップが法律を守って誠実な取引を行っているのか、その動物が販売されていることがそもそもおかしくないのかをしっかりチェックしましょう。
動物の取引や飼育を
規制する条約や法律
ペットとして飼うことが
禁止されている動物たち
規制する条約や法律
禁止されている動物たち
動物取扱業者ならば、どのような動物でも販売することができるのかというと、必ずしもそうではありません。
動物園で飼育されているからいってどんな動物でもペットとして一般家庭で飼えるわけでもありません。
一部の動物は輸入や取引、飼育そのものが禁止・制限されています。どのような決まりがあるのか、海外との輸出入を対象とする「国際取引規制」と、日本国内で行なわれている「国内取引・飼育規制」、この2つの側面から見てみましょう。
国際的な取引の規制
ワシントン条約
エキゾチックペットとして利用される野生動物の中には、絶滅が懸念されている種も少なくありません。
そのような動物を過剰な取引規制によって守るため、ワシントン条約(正式名称:絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約、略称:CITES、サイテス)という国際条約が定められています※5。
ワシントン条約は、国と国の間で国際取引が行なわれている野生の動植物種を、附属書Ⅰ~Ⅲという三つのカテゴリーに分けて、それぞれ異なるレベルの規制をかけています。
各附属書に掲載されている野生動物の数は、下表に示した通りです。附属書Ⅱに掲載されている動物が最も多く、その中には日本でペットとして取引されている動物も多数含まれています。
対象種と規制の内容 | 掲載されて いる動物の 種の数* |
日本でペットとして 取引されている動物の例 |
|
---|---|---|---|
附属書Ⅰ | 絶滅の危機が高いとさ れる種。取引規制が最 も厳しく、ペットの商 取引を目的とした輸出 入は禁止。 |
約700種 | ピグミースローロリス、 コツメカワウソ、 ホウシャガメ、ヨウムなど |
附属書Ⅱ | 国際取引を規制しなけ れば絶滅する可能性が あると懸念されている 動物。商取引のための 輸出入は可能だが、輸 出国政府の発行する「 輸出許可書」が必要 |
約5,000種 | グリーンパイソン、 カロリナハコガメ、 ミズオオトカゲ、 インドコキンメフクロウ、 コモンマーモセットなど |
附属書Ⅲ | 生息国が保護したいと 考え、国際的な協力を 求めている動物。商取 引のための輸出入は可 能だが、輸出国政府の 発行する「輸出許可書 」が必要 |
約200種 | パームシベット(インド)、 イボイモリ(日本)など |
感染症法と狂犬病予防法
野生動植物の保護を目的とする「ワシントン条約」とは異なり、人獣共通感染症を予防する観点から、動物の輸入を規制している法律もあります。
感染症法(正式名称:感染症の予防及び感染症の患者にする医療に関する法律)や狂犬病予防法です※6。
これらの法律では、例えば、人に感染症を感染させる危険性の高いサルやコウモリ、プレーリードッグなどのペット目的での輸入が禁止されています。また、犬や猫、キツネ、アライグマについても、輸入時に動物検疫を受けることが必須とされているほか、全ての陸生哺乳類、鳥類を輸入する際には届出の提出を義務付けています。
国内での取引と飼育の規制
種の保存法
日本国内で野生動植物の保護を目的に制定された法律の一つに、「種の保存法」(正式名称:絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律)があります※7。
この法律は、外国産の希少な動植物を「国際希少野生動植物種」、日本国内に生息・生育する希少な動植物を「国内希少野生動植物」に指定し、それぞれ取引や捕獲を規制しています。
「国際希少野生動植物種」に該当するのは、ワシントン条約の附属書Ⅰに掲載されている動植物、および二国間渡り鳥等保護条約で指定されている鳥類。日本国内での譲渡や販売、販売のための広告などが原則禁止されています。ただし、この規制が適用される前に輸入された個体であれば、登録機関に申請し、登録票を取得することで販売等が可能です。また、登録された個体から生まれた個体も同様に登録ができます。
「国内希少野生動植物種」に該当するのは、日本に生息する野生動植物で、絶滅のおそれが高く、国として法的な保護を行なうことを定めた種になります。この中で、ペットとしての需要が高く、海外での取引事例なども認められている種としては、リュウキュウヤマガメ、サキシマカナヘビ、サンショウウオ類などが挙げられます。捕獲や譲渡は、この法律によって禁止されています。
特定動物と特定外来生物
日本でエキゾチックペットとして人気を呼んでいる動物の中には、サーバルなどの大型哺乳類、ワニやコブラなど、人に危害を加える可能性がある動物も含まれています。しかし、そうした取扱いに危険を伴う動物は、動物愛護管理法により「特定動物」に指定され、2020年6月以降、ペットとして新たに飼育することが禁止されました。
また、日本の自然環境に悪影響を与える可能性があり、「特定外来生物」に指定されているカミツキガメやアライグマといった動物についても、ペットとして新たに飼育することは禁止となっています。
特定動物と特定外来生物に指定されている動物はいずれも、指定される前から飼育していた場合や動物園や研究所などの施設が、動物の種類や飼養施設ごとに許可を得た場合に限って飼育(保管・展示)が出来ることとなっています。
違法な取引に
加担しないために
希少な野生動物を守るために
私たちができること
加担しないために
私たちができること
これまで見てきたように、希少な野生動物を守るための取り組みはさまざまに行われているものの、その対策はまだ十分とはいえません。野生動物をペットとして購入することは、その種を絶滅の危機に追いやるような行為に加担してしまう危険性がある、ということを忘れてはいけません。また、軽い気持ちで購入意思を販売者に示すことも問題です。「この動物には需要がある」と誤解を与え密猟や密輸といった問題を間接的に助長してしまうおそれがあるためです。
こうした危険性を少しでも減らすために、まずは知ることから始めましょう。購入を検討する際には、以下のような項目をペットショップに確認するようにしてください。
自分が飼おうとしている動物が、
- 野生で絶滅の危機に瀕していないか
- 条約や法律・条例で輸入、販売や飼育が規制されていないか
- 「繁殖個体」「CB(Captive Bred)」の表示は本当にその通りなのか
- 日本のペットショップへどのような経路でやってきたのか
- 密猟や密輸された個体ではないのか
などです。
このサイトでは、犬・猫以外のいわゆるエキゾチックペットについて、各動物種/グループ毎にペットとして飼う場合のリスクや注意点、専門家の意見などを紹介しています。
また、本サイトに未掲載の動物について自分で評価するためのペット適性チェックや飼育環境が整っているかを確認するための飼い主チェックも用意しています。
ぜひ、こうしたツールを活用して、飼おうとしている動物や自身の環境について、よく調べ、飼育の適否を考えてみてください。